アメショーブログ 4898『九匹の猫と生きた二十年』136

(11/30)  ジロが夜中に遠吠えの様な声を発するようになったのは、失明から数カ月経過した二〇十六年・十一月頃だった。 毎晩数分間声を発しては寝静まった。 当時の一族は滅多に声を出すことはなくなり、唯一お喋りのウミだけが毎晩騒いでいた。 ジロの遠吠えは続いた。 同時に、少しだけびっこをひいて歩くようになった。 …
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アメショーブログ 4897『九匹の猫と生きた二十年』135

(11/29)  ジロは見えていた時とほとんど変わりなく過ごしていた。 足取りはゆっくりではあるが、食事やトイレも自力でこなし、一日のほとんどを寝て過ごした。 寝室のベッドの片隅で寝ることがジロの習慣だったが、失明して一カ月ほど経過すると、その習慣は戻った。 ベッドの端から上り、降りる時は反対側に回って降りるという道…
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アメショーブログ 4896『九匹の猫と生きた二十年』134

(11/28)  ハナの火葬も、クーとコジロと同じ動物霊園にお願いした。 三度目の立ち合い火葬だった。 毎回私が火葬場まで猫を抱いていくのも変わらなかった。 骨壺を包む風呂敷の色も、毎度私が選んだ。 ハナの風呂敷は、鮮やかなピンクにした。 無愛想だけど誰よりも深い愛情を持っていて、毛並は一番白かったハナに似合うと…
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アメショーブログ 4895『九匹の猫と生きた二十年』133

(11/27)  翌日、七月二十五日は私は朝から仕事だった。 職場への道の途中に、ハナが入院している動物病院がある。 病院の前を通りかかった私は腕時計を見た。 まだ午前九時前だった。 面会できる時間ではなかった。 私は祈りながら職場へと向かった。 午前九時半、私の携帯が鳴った。 動物病院からだった。 …
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アメショーブログ 4894『九匹の猫と生きた二十年』132

(11/26)  ハナの入院から一週間ほど経過した日の夕方、面会に行ったハナが珍しくケージ内で座っていた。 昔からハナは意思の強い目をしている。 入院中のハナはほとんど寝ていたが、その日のハナの目は久々に強さを取り戻していた。 ひとしきりハナの身体を撫でていた私は、帰宅するために立ち上がった。 「ハナちゃん、また明…
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アメショーブログ 4893『九匹の猫と生きた二十年』131

(11/25)  しかし祈りに反して、ハナの回復は進まなかった。 肝臓の機能が衰え、腎不全も併発しているハナの治療は困難を極めた。 症状を軽減させるための静脈点滴は、ハナの身体の不調を少しは軽減させたのかもしれない。 しかし、面会時のハナは寝ているばかりだった。 食欲も戻らないらしい。 腎臓の療法食などまるで…
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アメショーブログ 4892『九匹の猫と生きた二十年』130

(11/24)  ハナに再び異変が現れたのは、ジロが失明した一カ月後の二〇十六年・七月のことだった。 定期的な通院と経口投薬を継続してきたハナだったが、長期に渡る投与の弊害と思われる症状が現れた。 極端な食欲不振と嘔吐だった。 加えて強度の黄疸が現れた。 それまでにも、経口投与の弊害である嘔吐はあったが、軽症で…
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アメショーブログ 4891『九匹の猫と生きた二十年』129

(11/23)  ジロの目は元来黒目がちで、一見いつもと何も変わらなかった。 しかし、光の中で瞳孔が収縮しないのは一目瞭然だった。 猫は視力以外に、嗅覚、ひげの感覚、聴覚を使い生きている。 長年住み慣れた家ならば、たとえ視力を失っても他の感覚を使ってどうにか生きることはできると主治医から聞いた。 ただし、家の中の家…
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アメショーブログ 4890『九匹の猫と生きた二十年』128

(11/22)  一族の中心であり、みんなを繋ぐ大切な存在となっていたジロの異変は突然起こった。 二〇十六年・六月のことだった。 廊下で寛いでいたジロが、奇妙な声を発して倒れた。 今まで聞いたこともない声だった。 倒れたジロは、目を見開いたまま起き上がれない。 直ちにかかりつけの動物病院に連れて行き、クーとコジロ…
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アメショーブログ 4889『九匹の猫と生きた二十年』127

(11/21)  三カ月の寿命を宣告されながら奇跡の回復を遂げたハナだが、変わらず経口投薬を続けていた。 ハナの発病とコジロの突然の死。 二〇十五年の夏以降は、慌ただしく時間が流れた。 七匹となったクー一族は、寝て過ごす時間が多くなった。 長年単独で過ごしてきたハナには、退院以来ハルが寄り添うようになっていた。 …
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アメショーブログ 4888『九匹の猫と生きた二十年』126

(11/20)  コジロを失った一族の生活は、変わらず営まれた。 九匹が七匹になった猫たちとの生活は哀しみの中にも活気が戻り、私は彼らの姿の中にコジロを重ねた。 家の中を見ても、コジロが好んだ場所が残っていた。 特にリビングの棚の上に置いた特大段ボールは、コジロが大好きだった場所である。 みんなの爪とぎでボロボロに…
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アメショーブログ 4887『九匹の猫と生きた二十年』125

(11/19)  コジロの火葬は、クーと同じ動物霊園に頼んだ。 クーの時は私と夫と二人で火葬に立ち合ったが、コジロの火葬には娘も立ち合い三人での最期の別れとなった。 娘は既に結婚して家を出ていたが、仕事の都合をつけて合流してくれた。 娘の小学六年生のプレゼントとして我が家の一員となったクーは既に他界していたが、一族で一番…
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アメショーブログ 4886『九匹の猫と生きた二十年』124

(11/18)  動物病院の玄関に着いた私は、三階の緊急処置室に駆け上がった。 診察台にはコジロが横たわっていた。 口には呼吸器をつけ、心臓マッサージが施されていた。 「あれからもう一度吐血をした直後に心臓が止まりました。出血性ショックです」 電話をしてくれた当直獣医師が説明した。 私が到着するまで心臓マッサージ…
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アメショーブログ 4885『九匹の猫と生きた二十年』123

(11/17)  自宅の電話が鳴ったのは、明けて十月三十一日の夜中の二時半だった。 「コジロちゃんが大量の吐血をしました。心臓が止まりそうです」 夜間当直の獣医師の言葉に、私は家を飛び出した。 通い慣れた動物病院までの道のりは、走っても走っても遠かった。 祈りながら走り続ける私の脳裏に、面会時のコジロの一言が蘇った…
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アメショーブログ 4884『九匹の猫と生きた二十年』122

(11/16)  コジロの耳から出血を認めたのは、二〇十五年・十月末のことだった。 耳の中の腫瘍からの出血だった。 両耳を掻きむしることを抑制するために、コジロには日常的にカラーをつけていた。 それにもかかわらずの出血だった。 かかりつけの動物病院に入院したコジロは、点滴治療を開始した。 もう迷っている段階ではな…
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アメショーブログ 4883『九匹の猫と生きた二十年』121

(11/15)  命に別状はないと診断されたアポクリン腺のう胞の変異増大なのか、全く別物の腫瘍なのかは不明だったが、知らぬ間に進んでいたコジロの病気に私は大きな悔いと贖罪の念を抱いた。 私たちは全身麻酔の手術を行うべきかどうか、また両耳切除が本当に良策なのかどうかを考え、悩み続けた。 手術費用は二十万から二十五万と提示され…
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アメショーブログ 4882『九匹の猫と生きた二十年』120

(11/14)  コジロの異変に気付いたのは、二〇十五年・十月のことだった。 顎にあるアポクリン腺のう胞は、数は増えたものの身体に以上はないとの獣医師の言葉を信じていた。 しかし、コジロの耳からは異臭を発していることに気付いた。 かかりつけの動物病院に受診したところ、腫瘍が耳の奥いっぱいにできており、両耳の道が閉鎖されて…
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アメショーブログ 4881『九匹の猫と生きた二十年』119

(11/13)  ハナが劇的な回復を遂げたのは、入院してから一週間目のことだった。 肝臓の数値が正常値まで下がった。 伴い、腎臓も回復したのだ。 胆嚢は依然機能していないものの、黄疸は消えた。 主治医は驚いていた。 奇跡の回復とのことだった。 その夏を越えられないだろうと診断されたハナは、経口投薬に切り替え…
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アメショーブログ 4880『九匹の猫と生きた二十年』118

(11/12)  ハナに極度の食欲減退と嘔吐の症状が現れたのは、二〇十五年・五月のことだった。 かつてクーの治療をお願いした主治医に受診したところ、強度の黄疸が認められた。 精密検査の結果、ハナの胆嚢はほとんど機能しておらず、肝臓、そして腎臓も極端に悪いとのことだった。 その夏を越すことはできないだろうとの主治医の診…
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アメショーブログ 4879『九匹の猫と生きた二十年』117

(11/11)  最初に絶大な愛を抱いた愛猫・クーの他界は、私の心身に大きなダメージを与えた。 なかなか抜け出すことのできない辛い時間だった。 そんな苦痛の中でも私が毎日を生きることができたのは、残った一族のおかげだ。 愛を注ぐ対象があるということが、人を生かしてくれると実感する日々だった。  ジロとタロ兄弟の仲睦…
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アメショーブログ 4878『九匹の猫と生きた二十年』116

(11/10)  穏やかな時間が取り戻される中で、モモと一族を繋ぐ橋渡しの役割を果たしていたジロの存在はとても大きなものだった。 常に穏やかで大らかなジロは、決して他者と揉めることはしない。 モモの良き理解者であり、コジロやチビタへの気配りも忘れないジロは、一族にはなくなはならない存在だった。 猫社会にもそれぞれの役…
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アメショーブログ 4877『九匹の猫と生きた二十年』115

(11/9)  クーがいなくなった一族の暮らしは、新たな時間を紡ぎ始めた。 女帝モモの大きな変化により、長年続いた完全隔離生活からは抜け出した。 モモを慕っていたコジロは、モモを視界に認める時間が増えて嬉しそうだった。 時折おじおじしながらも喜んでモモもに近付くコジロを、モモは威嚇しなかった。 忘れた頃にチビタがモ…
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アメショーブログ 4876『九匹の猫と生きた二十年』114

(11/8)  モモのエリアにタロを入れて数日が経過したある日の朝だった。 私は驚くべき光景を見た。 玄関前の専用だんごベッドの中にはジロとタロが寝ていた。 その隣に置いてあったもう一つのベッドの中にモモがいたのだ。 ジロとタロとは鼻先が付く距離で向き合っていた。 長年クー以外誰も近付けなかったモモが、自ら二匹の…
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アメショーブログ 4875『九匹の猫と生きた二十年』113

(11/7)  クーが他界して三週間が経過した頃、女帝モモに少しの変化が現れた。 北側の部屋から一日中出てこなかったモモが、時折閉め切られたリビングのドアの前に佇んで中の一族の様子を眺めるようになったのだ。 ジロは既にモモから容認されていた。 私は試しにタロをモモのエリアに入れてみた。 そもそも玄関前に、ジロとタロ…
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アメショーブログ 4874『九匹の猫と生きた二十年』112

(11/6)  骨壺となって帰宅したクーを、私はリビングの棚の上に置いた。 動物病院から送られてきた菊の花束が、改めて私にクーの死を知らしめた。 一族は変わらずそこにいた。 残った八匹のごはん、トイレの世話、変わらない日常はすぐに始まった。 クーを亡くした大きな哀しみに永遠に埋没せずに済んだのは、残りの八匹の一族の…
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アメショーブログ 4873『九匹の猫と生きた二十年』111

(11/5)  モモの心中を思い、また私は涙した。 初めて我が家の子となった日から、モモにとってクーは親であり兄貴であり、伴侶であり友人であり、全てだったに違いない。 十年という短い時間ではあったが、クーとモモの絆を作るには十分だったのだろう。 玄関のドアを開けて、私はクーと共に一歩外に出た。 モモは少し近寄り、ク…
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アメショーブログ 4872『九匹の猫と生きた二十年』110

(11/4)  クーを火葬する朝のことは鮮明に覚えている。 私はクーを収めたキャリーを玄関に置いた。 「クーちゃん、この家が最後の日だね」 私はクーに語りかけた。 気付くとモモがすぐ後ろにいた。 クーと最後のお別れをしていたのだと分かった。 「モモちゃん、クーちゃんの側においで」 私は促して、モモが近付け…
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アメショーブログ 4871『九匹の猫と生きた二十年』109

(11/3)  まんじりともせずに朝を迎えた私は、すぐにクーの様子を伺った。 すっかり冷たくなったクーの身体に、私の目からは枯れたはずの涙が出た。 「ごめんね」 言葉にならない声が出た。 何に対しての謝罪なのか。 全てのことに謝罪しかなかった。 病気発見が遅れたこと。 大好きなごはんをあまり与えられなかっ…
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アメショーブログ 4870『九匹の猫と生きた二十年』108

(11/2)  動物病院から処方されたクーの皮下点滴セットは一カ月分だった。 私は結局、二回しかクーに点滴をしなかった。 まるで退院するのを待っていたかのような、クーの突然の死だった。 否、本当に家に帰るのをクーは待っていたのだろう。 良い子にしていなくてもいい、在りのままでいられる家に、クーは早く帰りたかったに違…
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アメショーブログ 4869『九匹の猫と生きた二十年』107

(11/1)  これが死なのだろうか。 「病院に電話して」 「もう無理だよ」 「それでも電話して」 私は再度夫に頼んだ。 夫は受話器を手にした。 ほどなく電話は繋がり、獣医師が電話口に出た。 あいにく主治医は休みで別の医師だった。 私は夫から受話器を受け取り耳に当てた。 「クーの口から舌が出ている…
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